巣鴨高校音楽室:サラウンド化計画

1)序章:
事の発端は2002年春、江古田勉強会RHの後、いつもの"お志ど里"で打ち上げ!
この日偶然三嶋さんが横に座った。彼は武蔵野音大出身で、江古勉ではバリトンサックスの
名手だが、本業は巣鴨高校で教鞭を執って早○十年のベテラン音楽教師です。
飲んで騒いでいる内に、いつしか話題がDVDの事に。
私はついつい普段思っていた事を、いろいろ喋ってしまいました。
「三嶋さん。今DVDのハードの一般実情ご存じですか?
値段の事だけを言えば、10万円も掛からずにフルセット揃い、そこそこ楽しめる
「お茶の間シアター」出来ちゃうんですよ!
でも反面、本当に「良い音」で音楽を聴いている子供たちって最近どれだけ居るで
しょう?妙に音を作られた「ラジカセ」「ミニコンポ」等が当たり前の世の中。
これは違うと思います。
情操教育の面からも、音楽本来の「楽器の音色」「和音の響き」「芸術性」等をきちんと
伝える事が、情報過多の現在の音楽教育現場のあるべき姿の一面ではないでしょうか?
と同時に、先程も言いましたが、ホームシアターがここまで身近になっているのですから、
高純度の音質でこれらを一早く導入する事によって、授業形態も一新されますよ。
等々、思いつくまま喋ってしまいました。すると・・・三嶋さん、
「そうなんです。私もホントにそれを考えていたのです。でも真剣にサラウンド環境の
音像を体験した事がないんです。ともかく、音を聞かせて貰いたい!」

2)音楽の先生の家庭訪問:
では、という事で数週間後、私の家に遊びに来ていただきました。
通常の「デモンストレーション」。Dolbyのロゴ、DTS Sample DEMOから始め、
私の気に入っている映画のワンシーンから、5.1ch mixの音楽、DVD Audioの新鮮な響き・・
等々、自分の作品、他人の作品含め、延々5〜6時間に渡って色々と聴いて頂きました。
すると・・三嶋さん、
「す・・・凄い!やりましょう! 一日も早く、うちの生徒先生たちに、是非この環境と
感激を味合わせたい!」
大変な事になりました。

3)初めての巣鴨高校音楽室、学校訪問
またまた数週間後、巣鴨高校音楽室に現状把握に出向きました。
何とセットされていた装備は凄いです。
スピーカーはTANNOYのエジンバラ。これを天井近くの壁面に埋め込ませている。
TANNOY http://www.teac.co.jp/av/TEAC_TAN/index.html

天井近くに埋め込まれた高級機
TANNOY EDINBURGH

折角のフロア型スピーカーが・・・。PreAmpDENONPower Ampは、
「最近、音が悪いって交渉して、買って貰ったんですよねぇ。
ゼヒ300W欲しいけど、と言ったにもかかわらず、マッキンだったら200Wでも充分。
と、押し切られてしまいました。でも相変わらず音が悪くって・・。」
・・・でもマッキン、イイじゃん♪、取り敢えず試聴。
    ・・・・何じゃこりゃ(;o;)・・・返答に困りました。

斜めから黒板を・・・

当然位相は滅茶苦茶でセンター定位も甘いし、F特も全く取れてないし、尚かつ音量を上げると
歪みっぽいし、どう伝えたら失礼にならないかなぁ?・・・
なんて困惑していると・・・三嶋さん。
「ひどいでしょ!」「はーい」
取り急ぎ、機種選定と大まかな見積書が何種類か出来ないだろうか?との話に。
何か、「マジ」な話になってきました。
慌てた私はこの午後空いていたので、速攻いつもお世話になっている秋葉原の
ダイナミックオーディオ・サウンドパーク店長中村さんに電話。アポを取る。
秋葉原にて中村さんと打ち合わせ。事の次第を説明し、この話に乗って頂けるかどうか
伺いました。快く引き受けて頂き、近々に下見をしようという事に。

4)音楽室での三者会談、アイディア爆裂
数日後、音楽室にて、三嶋さん、中村店長、私で打ち合わせ。
現状壁面に穴をあけてエジンバラが入っているが、実は壁に厚みが無く、裏に貫通。
そこに鉄板で箱を作って乗せているだけなのがわかった。
って事は、我々としては壁面埋め込みの考えは不可能になる。スピーカーの高さも
高すぎない方向が良いと思われる。みんなで知恵を絞りまくります。
「オーディオラック、それも天井までの巨大なヤツを組みましょう。」
「黒板もその中に入れちゃいましょう。」
「どうせなら、この際ホワイトボードにしちゃいましょう。チョークの粉で汚れるのは
もうイヤだし!」「でも現状と同等の面積は必要です」
「防犯上普段は隠れていて、必要な時だけ開けるとスピーカーが出てくる形」
Power Ampは全面にスモークガラスを配して、暗転時に巨大メーターが
ほのかに浮かび上がると格好良いね!」
「三嶋号みたいに、リモコンスイッチ一発で全ての操作が出来ると便利だな。」
・・・等々意見が出てきました。
これを元に、設計を始めようという段取りです。

5)色々なキメ事
ここで学校側と具体的な仕事配分の折衝。こちら側の意見としては、
これらの設計、施工を全てこちら側でやらせて頂きたい。理由として、
ハイエンドオーディオ関係を熟知しているスタッフが必須である点。
特に、映画等音量をかなり上げた場合のきしみ、ビビリ等の耐音圧対策を
当初から考慮に入れた設計施工出来る業者でなければ本来の音が出せない点。
是非これだけはとの交渉。のんで頂きました。
現実的には、既存の黒板、埋め込みTANNOYJBLの撤去。新設配電盤工事。
三管プロジェクターの移設調整。これを学校側が8/12までに工事します。
こちらは8/138/25で、諸工事、取り付け、調整試聴全て終わらせる
という様な役割分担と、日程調整が完了しました。

6)設計と機種選定
設計はダイナの試聴室等、音響関係をかなり熟知されている「新野建創」新野さんに
お願いする事となる。
ある日、新野さんも含め、現場でチェック

中央寄りの黒いスピーカーは
20年以上機能していない様子
 

ダイナ、中村店長が教壇に

同時に細かな機種選定も中村さんと進める。
こちらのイメージの要望を、中村さんが金額等照らし合わせながらアレンジ。
サラウンドとの共存だが、やはり2ch.再生に重きを持たせる方向性に決定。
スピーカーはB&W Nautilus 802、パワーアンプは1200WMcIntosh1201
を基本に進めていく。
一応、音の方向性を聴いて頂くべく、三嶋さんにダイナで試聴して貰いました。
当初予定の「N 802」を設置してある試聴室が先約だったので、時間調整でその上の
グレード「N 800」設置の部屋でひとまず試聴。
これが素晴らしく良い。「すげぇ!」私もつい、嬉しい悲鳴を上げてしまった。
その後先程の試聴室に戻り、納入予定の「N 802」を聴くと、なんだかとても普通の音・・
上で聴いた「パッション」が無いぞ!と思っていた矢先、・・・・三嶋さん。
「さっきのを聴いたら、もう戻れなくなっちゃいました。」
部屋の大きさと価格を考慮に入れると、「N-801」納入決定! の巻でした。
B&W HP  http://www.marantz.co.jp/bw/n800/index.html

7)予備試聴。副校長先生登場!〜〜プレッシャー
同時に、6月末から7月に掛けて、何回か現場等で打ち合わせ、採寸。
天井までの巨大ラックの設計図も徐々に仕上がってきた。なかなかいい感じだぞ。

ここで、重要なスタッフを一名加える事にしました。
こだわりの電源ケーブルでお世話になっていた「N2」(根岸通信)根岸さんです。
N2 HP  http://www.negishi-tsushin.com/
彼は一見「電気工事士」ですが、その実体は私より遙か上を行く
「ハイエンドオーディオマニア」です。良い意味でのアマチュアの耳とノウハウ、
その上、プロの配線技術力を持ち合わせた彼を、絶対にこのプロジェクトに参加して
頂こうとお誘いし、快く承諾して頂きました。
彼には、お得意こだわりの電源系から機器間ケーブル等々の制作、配線、設置。
そして、とても大事な最終調整まで付き合って貰う事にしました。

7月頭、現場でスピーカーの高さが問題になる。当初の設計だと、かなり高い位置になり
(床から底辺まで120cm)フロア型801の特性が心配になります。
そこで、ダイナ試聴室で、高い位置での試聴が可能か問い合わせると、中村氏は
「折角だから他のお客が居るとゆっくり試聴出来ないし、閉店後にやりませんか?」
と嬉しいお誘い。
今回は、予備試聴と言う事で巣鴨学園副校長、堀内不二夫氏にも御同席願おうという事になりました。
ある日の19時から試聴開始。 副校長先生は当初から「イイねぇ!」を連発。
あらかじめ聴き慣れたCDを持参するよう三嶋さんに伝えておいたので、
お二人が聴き慣れた作品を取っ替え引っ替え試聴しておりました。
あれ・・?高さの問題はどこかに行っちゃったゾ。
その日は約90cmだったのですが何の問題もなかったので、この程度でGO
それにしてもこのお二人、この日22時過ぎまで堪能して行かれました。

同日、私個人的にもカルチャーショックだった事があります。CDプレーヤーです。
今まで、ある程度以上の機種だったら、さほど音質的に違いは無いと思っておりました。
ところがです。
最初、深く考えずに自然に聴いていたLINN社のCDプレーヤーとDAコンバーター、何と
\2,700,000ですって。
この事が試聴中にも問題になり、実際学校に納品するCDプレーヤーとの比較試聴しよう
という事になった。聴いてみると、お・ど・ろ・き!
堀内先生の言葉を借りれば「普通のステレオの音になっちゃった。これじゃぁダメだな」
比較対象は決して廉価版ではありません。一流メーカー品¥150,000クラスのものです。
でも、誰が聴いてもわかるほど確実に違います。
楽器が「かくあるべく楽器」になっている。例えば、バストロンボーンがバストロの音に
なっているし、チェロも等身大。
これに引き替え、納品予定品は単に楽器が鳴っている・・・というような大差。
CD プレーヤーだけでのかなりの差を、この年になってまじまじと見せつけ・・いや、
聴かしつけられて、非常なるショックを受けました。
結果、学校は「LINNIKEMI」に落ち着く事となりました。私も欲しくなりましたね。
当分立ち直れません!?。
ともかく、副校長、堀内先生にご満悦頂けて、第一弾ホッ!
でも心配、あの音楽室で、この日と同等若しくはそれ以上の結果を出さなければ
いけないのですから。一段とプレッシャーが・・・。